新しい年が始まり1ヶ月が過ぎようとしています。今年もベランダに現れた椋鳥、微かな梅香、輝く冬の星座等々様々な事象に時の流れを感じます。人生というものはほんの少し時間と場所がずれていたら全く変わったものになってしまいます。僕らの若い頃は好きな事が自由にできる恵まれた時代でしたが少し時間がずれていたら戦争に巻き込まれ軍事政権下に生きていたかもしれません。今もウクライナでは爆音に震える同胞がいます。今の世界情勢を考えれば他人事ではすまされません。
昨年広島ギャラリーたむらの協力で版画の売り上げをウクライナへ支援しましたが一日も早くロシアの軍事侵攻が終わることを祈ります。ベラルーシの作家アルクシエービッチは『人から獣か這い出してきている。』と嘆きながら『作家は人の中に出来るだけ人の部分があるように仕事をしなくてはいけません。』と新春インタビューで語っていました。僕も全く同じ気持ちで筆を持っています。長い歴史の中で戦争の虚しさは十分理解しているはずなのに再び同じ過ちを繰り返すのは悲しい事です。皆が望めば戦いは終わります。大事なことは此の世界を皆で分け合い愛することです。それは夢だと笑われるかも知れませんがジョン・レノンが半世紀も前に唱えていたことです。終末時計は後90秒を指し示しています。
針を進めたのは愚かな人間ですが戻す事が出来るのも我々人間です。
今日も此の星はいつも通り我々を乗せて銀河を旅しています。同じ船に乗り合わせた者は各々の役目をこなしながら助け合わなくてはなりません。人が人であることを忘れないように仕事をしていきたいと思います。今は『僕の周りの宇宙』をテーマに仕事しています。
夏に銀座養清堂画廊で発表予定です。
笠井正博