2013年3月15日

春が広がり木々の新芽も膨らんできた。
今冬の寒さは厳しかっただけに春の訪れは嬉しい。
花粉や大陸汚染大気による春霞には困ったものだが
空には国境もなく風は自由に流れている。

嘗て人も風のように国と言う意識なしに暮らしていた頃がある。
定住しない人々は海や森を渡り、知らない土地を彷徨い異質な物と出会う。
肌、髪、瞳の色が違う相手を見つけた時
争う事もあっただろうが身振り手振りで気持ちを通じ合わせた事もあったと思う。
そんな時に相手に何かを伝えようと声を出したり身体を動かしたりしただろう。
それが歌になり踊りになった。
また自分の見た物を地面に描いて説明したり
粘る土でその形を表現した者もいたはずだ。

昨年、イスタンブルでこんな事を考えていた。
旅人として買い物をしたり現地人と振れ合ったりしていると
今も似たような事をして気持ちを伝えていた。
イスタンブルは何百年もの昔から西と東の人が出合い
異質な物が混じり合い独特の文化を発酵させてきた。
この街で時を過ごしていると、人は基本的に人が好きで
肌の色や信仰の違いを超えて出会える事に喜びを感じる生き物だと思える。
そしてその喜びの中から生まれてくるのが芸術だと思う。

こんな事を想いながら
イスタンブルのジャーミーで描いてきた光を表現したいと
今日もアトリエで画面に向かっている。
作品は7月16日〜27日、銀座養清堂画廊で発表予定なので
お時間がある方には見ていただきたいと思う。

笠井正博