2010年10月9日

厳しい暑さの夏も去り秋風が流れてきました。
それに乗って甘い香りが漂ってきます。いつも同じ時期に一斉に香りを放つ金木犀。 宇宙の何処からか指令が出ているのでしょうか。時を揃えるように萩の花も開き季節の 動きを感じます。僕らもこんな指令を感じながら毎日を生きていけたらと思います。

今更言うまでもありませんが人間は快適さを追い求めてこの星を自分たちの都合で大きく変化させてきました。今夏のような猛暑でも空気調整機によって涼をとりその結果多量の炭酸ガスを大気中に放出させました。このままでいくと次の世紀はなくなるかもしれないとまで言われているのに。具体的な恐怖を感じないとなかなか実感が湧かないかもしれませんが、海面の水位上昇や気候の急激な変化などでも十分恐怖を感じます。パンドラの箱のように最後まで開かないと分からないのかもしれません。

とはいえ今年も美しい秋が僕らを色々楽しませてくれます。紅葉、秋草、木犀の香り、虫の音、新酒、新米、さんま、戻りガツオ、マツタケ・・・。四季の中でも一番喜びが多い時かもしれません。農耕民族として秋は一年間働いたご褒美の季節、各地の神社でお祭りが催されるのも分かります。

さて気がつくと僕も五十路の後半にさしかかり人生の秋を迎えている感じです。絵を描き始めてからも30年以上の時が流れ、細々ではありますが当初の目標通り絵を描くことだけで社会参加を続けています。勿論沢山の方の温かい視線に助けられながらです。今年も暑い中を展覧会に来てくださった皆さんありがとうございました。現在も香りシリーズを続け芍薬をモチーフに「長安の香り」を描いています。昨今の対中国関係には蟠りがあるようですが、かつて日本は中国から沢山のものを吸収し独自の文化を育んできました。とくに天平時代には絹の道に乗ってやってきた西方世界の物までが届いていました。当時中国は唐の時代、都は長安、世界各国の人が行きかい文学、音楽、舞踊などなど高水準な芸術が花開いていました。そこで玄宗皇帝と楊貴妃が愛でた花が牡丹や芍薬でした。香りはさほどありませんがその折り重なる花弁の形に長安の華やかな香りを感じます。来夏には銀座並木通りの養清堂画廊で見ていただけると思います。

最後に先月完成した緞帳のことをお知らせします。山形の織元山口さんとの共同作業で千葉の市川学園のホールに収めました。テーマは海底の光、初期生命が海中で生まれた事をイメージしています。写真をアップしましたのでご覧ください。

では皆さん一年中で一番美しい季節秋を十分お楽しみください。

笠井正博