2010年7月11日

梅雨の重い空気が立ち込める中、梔子の甘い香りが少し気分を救ってくれています。 いつの間にか夏至も過ぎ朝顔の蔓は軒下まで伸び時間の経過を感じます。

西洋では夏至に不思議な事が起こるといわれています。ストンヘッジの石組みや古い神殿などは夏至の日の太陽の位置を基準に作られていたり、シェクスピアのMIDNIGHT DREAMも夏至の夜に妖精パックが悪戯をする話です。太陽と地球の位置で起こる色々なドラマ、我々の身体にも何か影響がありそうです。先日は部分月食がありました。太陽を中心にいくつもの球体が回っている太陽系、その第三惑星地球の上で小さな球を蹴飛し世界が騒いでいる人間の様子を見ていると不思議な気持ちになりますが、惑星探査機「はやぶさ」の帰還やイカロスの活躍は人間である事を少し嬉しく思います。彼らが伝える情報で今後僕らの夢がどのくらい膨らむのか楽しみです。

今春東シナ海で水平線を眺めながら8世紀頃この海を未熟な航海技術で渡った人々の事を考えていました。命がけで海を渡り目指した唐の都長安(西安)、今の我々にとっての月や火星のような存在だったかもしれません。最近中国で遣唐使・円仁の石碑が見つかり話題になっていますがあの頃の長安はコスモポリタン、地球の首都的存在だったようです。世界中の人が行きかい文学・美術・音楽が大きく開花していました。そんな土地から命がけで持ち帰った宝物が煌びやかな天平文化を作りその後の日本文化を創っていきます。香木もそのとき渡来し香道もここから始まります。

香りを描き始めて5年、初めは香道の香りが中心でしたが最近は生活の中で身近に感じる香りを描いています。現在は芍薬の香りからイメージが膨らみ「長安」シリーズを始めています。大輪の芍薬の花がモチーフですがデッサンをダブらせる事で揺らめくような不思議な画面になってきています。これから夏に行う個展会場でその一部をお見せできるかもしれません。お近くの方は是非おいでください。

さて前橋のセントポールギャラリー、目白のギャラリーフロウでの個展は無事に終了しました。来てくださった方々ありがとうございました。香りという捕らえ所のないものを描いた画面から皆さんは何かを感じていただけたでしょうか。暑い毎日、皆さん御身体御自愛の上素敵な夏をお楽しみください。

笠井正博