2010年3月26日

地震や津波、相変わらずの世界不況、明るいニューズの少ない昨今ですが幸いな事に春はまだ沈黙せずに今年も櫻が開花しました。散歩道には沈丁花が香り鳥の声が明るく聞こえてくるだけでも気分が華やぎます。

春はラテン語圏では「初めての時」、英語圏では「はじける、湧き出す」、日本語は「張る」、という意味が語源となっているようです。何処の国でも春はわくわくしてきます。

今のような地球が出来てから何度も春は廻り古の人たちも心躍らせていたのでしょうか?

先日約4万年前のロシアにこれまでに知られていなかった系統の人類が生存していた事が明らかになりました。今の人類と絶滅したネアンデルタール人は約47万年前に枝分かれしたとされています。新たに発見された人骨はDNA解析により104万年前に共通の祖先から枝分かれした人類で発見された洞窟の名前からデニソワ人と名づけられたそうです。このことからインドネシアで10万年まえまで生存していた人類など多様な人類がユーラシアで共存していたことになります。日本人がどの様な民族の末裔であるかはっきりとは分かりませんが北方からの民族と海上を渡って南方から来た民族の混血と考えるのが自然ではないでしょうか?とすると我々の中にもデニソワ人の血が少しは流れているかもしれません。

さて現代の日本人社会は世界でも類を見ないほどせせこましく、どの分野でも互いに微妙に差別しあい、その差別のかすかな優越の上に自分の社会性を安定させているように思えます。こんな社会に暮らしていると自己というものが次第に解けていくような恐怖に駆られ、平たく言えば疲れてしまいます。そんな時に僕は海を見に行きます。

先日も沖縄の久米島へ行ってきました。琉球王朝時代に大陸との交易の拠点となった島で米を始め様々な物が「海の道」を通りこの島経由で本土に伝わりました。白い遠浅の海岸に座りターコイズブルーの東シナ海を眺めていると遠い昔民族とか国家などという肩書き無しにこの海を行き来していた人々の事を思い少し心が自由になりました。

久しぶりに海のデッサンもして、また青い作品が出来そうです。今年前半は前橋と目白の画廊で個展が決まっているので少し見てもらえると思います。

笠井正博