いつの間にか時は流れて雨の季節。
散歩道には梔子の甘い香り、朝顔は蔓を伸ばして少しざらついた本葉を付け
紫陽花は色を滲ませ、雨音は静かにリズムをきざんでいます。
嗅覚、触覚、視覚、聴覚、備わった感覚器官を通して人は様々な事を感じ
生きている事を確認します。
電脳、テレビが人の生活に深く関わり始めてから現代人は本当の体験をしないまま
様々な事を経験したような気になっています。
自分の五感で直に感じるからこそ詩や絵画が生まれるので溢れる情報や映像からは
何も生まれてきません。
この時期若鮎のほろ苦い腸の味、活字で読んでも何も感じませんが自分の舌と
鼻腔で味わえば頭の中は様々な記憶が蘇り色を感じたり和音が響いたりします。
色彩学者は人が音に色を感じる事を実験で実証したり
ピアニストはメロディーの奏で方を「少し暗い紫のように」などと説明します。
五感は単独ではなく脳の中でリンクもしているのです。
僕は日々生きている中で自分が感じたことを出来る限り描いていこうと思っています。
特に視覚では捕らえられない現象を描きたいと思っています。
香りのシリーズも描き始めてから5年になり今回は花の香りです。
銀座養清堂画廊、大阪プチフォルム、広島ギャラリーたむらなどで
発表いたしますので是非見ていただきたいと思います。そして何かを感じていただけたら
嬉しく思います。
笠井正博