2007年10月10日

見上げる夜空の星座も移り変わり、秋は次第に深くなってきました。
我が家の玄関横には種蒔きが少し遅れた朝顔が今頃になり満開になっています。
小さな種を蒔いたのが7月、その中に設定されたとおり成長して開花したようです。
その横では小さな苗木の葉に青虫が這い、やがて蛹になり美しいアゲハ蝶になりました。
生物は自分の意思とは違う大きな力に操作されて生まれたときから死ぬまで決められた 変化をたどっていくようです。炭酸ガスの増加や環境ホルモンの影響などで生物の変化に 少し狂いが出始めているようですが、僕の周辺では予定通りに金木犀の香りが漂い始め 萩の花が愛らしく開花し、いつの間にかヒヨドリは姿を消しました。
僕らも同じ生命サイクルの中で生かされているのですがその事を忘れがちです。
僕はこの頃道端の草花や虫がとても愛おしく見えます。歳を重ねたせいでしょうか?
植物は時間通りに芽を吹き花を開かせ実を結び、虫たちも決められたとおりに地面から 這い出し草陰や木の上で唄いだします。こんな当たり前の光景に大きな宇宙のリズムを 感じます。そのような中で現在僕の描いているテーマは草です。ただの雑草を描いています。視線は上からではなくて出来るだけ草の中に入って虫の視線で描いています。
幾重にも折り重なった草を描いていると疲れますが不思議な快さもあります。
画面をだんだん大きくして描いていくと自分が虫になったように見えてきます。
来年秋に渋谷の文化村ギャラリーで見ていただけると思います。
最後に今僕の中でブームになっているアメリカの女流詩人エミリ・ディキンスンの詩を。

小石はなんてすてきなんだ
道端に独りころがって
仕事のことも気にかけず
衣食住のこと欠くも恐れずに
その天然のコートは
通りがかりの宇宙が着せたもの

笠井正博