2003年12月7日

年齢を重ねると生活が単調になるためか時の流れをとても速く感じる。
気がつけば師走、ホームページも半年近くそのままになっていた。
今年は9月後半に南仏ニースからヴァンスという村へ行き山裾の民宿で一時を過ごした。旧市街は中世の町並みがそのまま残る城壁都市で鷲巣村と呼ばれている。地中海性気候と高地のためか光に暖かさと優しさを感じ照らされる物はオレンジ色に輝いているようだった。まだ少し残る夏を感じながらオリーブの木下で取る朝食はとても幸せなものだった。
ヴァンスから慣れないレンタカーで山岳地帯に点在する村を訪ねた。
香水の聖地でもあるグラース、ルノアールが晩年を過ごしたカーニュ・シュールメール、コクトーやピカソがよく訪れたサンポール・ド・ヴァンス。
どの村も北の街とは違い人々がとても暖かい。旅行者に対してもほとんど現地の人間と区別をつけないように親しく接してくれた。ラテン気質なのかとにかく皆明るい。
オリーブオイルとニンニクを多用したプロバンシャルな味は胃袋も幸せにしてくれた。
ほんの僅かな時間だったが嫌な事の多いこの現代から離れて少し暖かくなった。
こんな気分を少しでも絵に託せないかと現地でスケッチしてきたオリーブの樹を版画にしてみた。最近の世の中を見ていると悲しくなる事ばかりでどの様に生きたら良いのか分からなくなる。僕は絵を描く事を仕事にしているので同じ時間を生きる人々の心を少しでも暖かく出来ないかと考えている。
今製作しているブナの森のシリーズも森の持っている共存して美しく生きると言う事がテーマになっている。来年6月に渋谷の文化村ギャラリーで 発表する予定になっている。その時には是非見ていただきたいと思っている。

笠井 正博