2003年5月21日

僕等は何処から来て何処へ行くのだろうか?
生命という物を考えるとその大元は遥かかなた
宇宙空間の暗黒星雲にあったように考えられている。
それが彗星に乗り地球に生命の種子が蒔かれたそうである。
それから長い時が流れて我々は今ここにいるわけである。
なんの為にこの様になってきたのだろうか?
最近の世界情勢を見ていると人類はあまり良くない方向へ
進んでいるような気がする。あたかも全てを自分達が分かっているような
全てをコントロール出来るようなそんなおごりがこの様な状態を
招いているような気がする。

去年の初夏山形に住む友人に案内されて朝日連峰の登山口である
大井沢という村でひとときを過ごした。その時に山人(やまんど)として有名な
志田さんを紹介されそのお話に強く心を動かされて以前から興味の
あったブナの森を描いていこうと思った。
森は地球上の生態系でもっとも完成された形だと言われている。
太陽の光を吸収して植物は育ち花を咲かせ実をつける。それを昆虫や
草食動物が餌として消費しその生き物も食物連鎖で食べられ、それらの
糞尿、死骸や落ち葉、落枝などは地中のバクテリアなどが分解し
その養分がまた植物の生産活動に利用される。まったく無駄がない
物質循環を確立している。
ブナの森はその中でも特に豊かだ。それは巨大な緑のダムと言われるほど
保水力が高く、その水は森の生き物だけにとどまらず河川や海の生き物達までも
育んでいる。
そんな事を全く知らなくともその森の中に入ると聖なる空気を感じる。
仏蘭西ブルゴーニュ地方に点在するロマネスクの教会に入った時と
似た感じだ。こんな気配が画面に描けたらと思い制作を続けている。
僕は特に環境保護や森林伐採反対に強い関心がある訳ではないが
この森から今の人間が学ぶ事は多いと思う。

今年の夏銀座の養清堂画廊で初めて少しだけ出来た『ブナの森』の
版画を発表したいと考えている。
まさまだ十分に描けてはいませんがおひまのある方はご覧になっていただきたい。

KASAI